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サイ夕マ先生、スーパー銭湯に行く

――後日談――

キング宅にて。

「……って感じで、スーパー銭湯結構楽しめたわ。あとソフトクリームがマジで美味い。あれってあそこでしか食べれないのかなぁ」

 大型モンスターを二人で狩りながら、過日のお高いソフトクリームに思いを馳せる。

「たぶんそれ、うちの近所の喫茶店でも売ってるよ。巻き方が特殊で、コーンも普通のと違ってなんか薄いやつでしょ?」
「おっ、マジで?!多分それだわ、今度店教えてくれ」

 自分が知らなかっただけで、わりと他でも食えるらしいことにテンションが上がる。高いので滅多に食べれないけど、何か特別な日にまた食べたい。

「それは良いけど、あのさ、一つ聞いていい?」
「ん、何?」
「二人ってさぁ……付き合ってないよね?」
「は?それどういう……っと、あぶね」

 理解ができない質問にキングの方を向くと、攻撃を食らってしまいコントローラーが震えたので、またすぐにテレビに視線を戻す。

「いや、だから、恋人関係という意味で、付き合ってるのかなぁと」
「へっ?!」

 とんでもない質問に驚いてボタンを押し間違え、今使わなくていいアイテムを使ってしまった。

「えっ、俺とジェノスがか?!ないない!何言ってんだキング!」

 画面に映る標的から目を離さないまま強めに否定する。俺とジェノスが、だなんて。男同士で付き合うとかありえない。二人で暮らしてはいるが、ジェノスが大金とともに押しかけてきた経緯はキングも知っているし、一緒に暮らしているために二人で出掛ける機会が多いことも知っているはず。何がどう転べば、そういう質問に繋がるのかさっぱりわからない。

「だってさぁ……いや、やっぱりいいや。ところで、そんなサイタマ氏におすすめの少女漫画があるから、今度貸すね。どこにしまったか……、次来るまでに探しておくよ」
「えっ、俺、少女漫画なんて読まねぇよ」

 キングがモンスターにトドメとなる一撃を与え、画面上にはクエストクリアの文字が躍る。

「たしかにサイタマ氏が好きなバトル物でもなければ、主人公が少しずつ強くなっていくような内容でもないけど、ぜひサイタマ氏に読んでほしい」
「えー」
「……読んだ上で感想教えてくれたら、ソフトクリーム奢るから」
「えっ、マジか、んじゃ読むわ」

 漫画とソフトクリームの繋がりがわからないが、そのおすすめの少女漫画について共感しあえる相手が欲しいのだろうか。ともあれ例のソフトクリームがまた食べられるのなら即返事で受け入れる。

「あ、そういえば今日は15時には帰るって言ってなかったっけ?そろそろ?」

 言われて時計をみると14時48分を指している。たしかにキリが良い時間だと立ち上がる。

「うん、丁度良い時間だし帰るわ。ジェノスが今日は夕方には帰ってくるらしくてさ。一緒に白菜餃子作る約束してるんだよ。……あ、大量に作る予定だから、冷凍したやつ持ってきてやるよ」

 ベランダ側の窓を開けて、そこに脱ぎ捨ててある靴を履く。

「……サイタマ氏、本当にジェノス氏と付き合ってないの?俺に隠してたり」
「しねぇって!何回言わせんだよ、しつけーな!」

 同じことを繰り返し聞かれるのは鬱陶しく、さっきよりも強めに否定する。

「そ、そっか。……ていうかいつも言ってるけど、玄関使ってくれない?」
「エレベーターなかなか来ないから、こっちの方が早いんだよ。んじゃ、またな」

 
 ――サイタマがいつも通りにベランダから帰った後、キングは再びコントローラーを手にして深い溜め息を吐く。

「普通、男同士で頭や体を洗いっこしたり、岩盤浴でそんな風にイチャついたり、ソフトクリームの交換なんてしないんだけど……全部無自覚って、ジェノス氏も大変だなぁ」

 二人で遊びに来たときや、二人の家に遊びに行ったときに、ジェノスがサイタマに向けている熱視線と、自分に向けられる冷たい視線を思い出し、キングは溜め息をもう一つ吐いた。

ー終わりー

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