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一寸先生

 サイタマとジェノスが街を歩いていたところ、ジェノスの携帯電話にヒーロー協会から怪人討伐依頼が入った。一瞬で人を消してしまう能力があるらしく、A級やB級ヒーローでは荷が重い案件、最も近くにいたS級ヒーローが鬼サイボーグだったので、という話を聞きながら二人で現場に急行する。

 協会の指示する場所に着くと、数十メートル先で昔話に出てくる赤鬼によく似た怪人が逃げ惑う人々を追いかけていた。不意に一つ目から光が発せられ、その直後、先程まで確かにそこにいたはずのスーツ姿の男が――消えた。

「なっ、消えた!?」
「っ、クソ!」
「先生!? お待ちくださいっ、あの能力は危険です!」

 ジェノスが静止するのを聞かず、サイタマは怪人の元へと跳躍し、赤黒い胴体に向けて神宿る正義の拳を振りかざす。

 怪人の体が破裂するのと、先程同様の光がジェノスの視界を遮るのは、ほぼ同時だった。

「先生……? ――っ、サイタマ先生、どこですか!?」

 ジェノスの目の前で、サイタマが消えた。ジェノスの思考回路が一瞬停止した後、怪人だったもののそばに駆け寄ってみるもその姿はなく。しかし搭載している「サイタマ先生サーチ機能」は、ジェノスの今いる場所を指し示す。

「サイタマ先生っ! クソッ、これは一体どういう――」

 ジェノスの焦りが絶望へと塗り替えられようとしたその瞬間、怪人の死体が間欠泉のように垂直に吹き飛んだ。

「あー、ビックリしたー」
「先生!? そ、そのお姿は、大丈夫ですか先生っ!?」
「ん? あれ、お前なんかめちゃくちゃ大きくなってない?」
「俺ではありません! 先生が小さくなっているんですっ!」
「え? えええぇええー!?」

 肉塊がはじけ飛んだその場所にいたのは、ジェノスでなければ一瞬で見つけるのは困難なほどに小さく縮んだ、全裸のサイタマだった。

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