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The SAITAMA Before Christmas 前編

サイタマがキングの家から自宅へと戻ると、ちょうどジェノスが洗濯物を取り込んでいるところであった。
ピンクのエプロンを着用して「おかえりなさい」と微笑むジェノスの金髪に夕陽が射し、キラキラと一層輝いて見え、サイタマは目を細める。

「先生? どうかされましたか?」
「……いや、ちょっと夕陽が眩しいな、と」
「あぁ、そうですね。今日は久しぶりに天気が良かったので布団も干していて――ほらっ、先生、フカフカですよ!」

機嫌よさげな明るい声で言いながら掛布団を両手に抱え、その端から笑顔を覗かせるジェノスに、サイタマは両手で顔を覆って天を仰ぐ。

ああ、俺の恋人がこんなにも格好良い。そしてこんなにも可愛い。
「サイボーグなので」を口癖にしていた男が、まさか”こう”なるなんて――。

帰り道でクリスマスプレゼントについて悩みぬいた末に、やっぱりオイルサーディンと筆記具でいいか、と安易に考えていたことを頭の中で破り捨て、サイタマはアルバイトをしようと決心した。
しかしジェノスのことだ、アルバイトが知られようものなら札束を叩きつけてくるだろう。
ばれないようにジェノスに予定があるタイミングを見計らわなければ、と考えたところで、そもそもジェノスのクリスマスの予定を把握していなかったことに気が付いた。
当然のように二人で過ごすものと思っていたが、例年のように研究所で過ごす可能性だってある。

「ジェノ――」
「せんせ――」

偶然にも声をかけるタイミングがジェノスとかぶり、「お先にどうぞ」と譲られて、サイタマは小さく頷く。

「もう十二月だけど、ク……いや、年末年始は研究所に帰るのか?」

クリスマスの都合を聞こうとして、さすがに直接的過ぎるかと直前で思い直し、年末年始でごまかして問う。

「年末年始、ですか?」

掛け布団を抱えたままのジェノスがサイタマを見つめてパチパチと瞬きをし、定位置へ畳み置いてから、改めてサイタマと向き合った。

「――サイタマ先生さえよければ、俺もこっちで先生と過ごしたいです。その前のクリスマスも、一緒にどこか出掛けたいと考えていました。ただ、毎年十二月下旬は各種検査とオーバーホール――あぁ、俺のこの身体の大掃除のようなことですが――それを一週間ほどかけてやっているので、前倒しできるか博士に相談してみます」
「そっか。俺は別に何の予定も無いし、いいけどさ、爺さん寂しがらない?」
「どうでしょう。これを畳み終わったらクセーノ博士に電話して聞いてみますね」

これ、と言って落とされた視線の先にある洗濯物の山。サイタマは「俺もやるわ」と返し、二人してもくもくと積まれた洗濯物を畳んでいく。

「――あ、そういえば、さっき何言おうとしてたんだ?」
「え、あぁ、はい、俺の頭髪を見て顔をしかめられていたので、やはり博士に依頼を――」
「っ、なもんいらねぇよ!」

ちょうどサイタマが畳み途中だったバスタオルを、正面に鎮座するジェノスに向かって投げ当てる。
広がったタオルは偶然にもジェノスの金髪を覆い隠した。

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